ファルコノイド・ファルコンリー・アカデミー(Sugisaki )

E-mail 相談記録

2008年
【3月25日】
Q:Thermal-mounting(上昇気流を使う鳥)とSelf-mounting(自力上昇する鳥)の是非

A:
自然界のハヤブサは上昇気流を使って上昇することが多い。生存することが第一の目的である自然界のハヤブサにとっては、体力を使わずいかに効率よく生きるかが問題となるので当然のことである。
 しかし、ファルコナーの飼育下のハヤブサは、単に生存することではなく、良いハンティングを行うことが求められるので、上昇気流を使うハヤブサの行動は修正する必要がある。

 
上昇気流を使って上昇するハヤブサは、ファルコナーのフィストからスタート後、上昇気流を探しに遠方へ向かい、上昇気流を発見するとその場所で上昇し、ファルコナーがコールしない限り、飛行性好子を求めて上昇を止めない傾向がある。ファルコナーのコールのタイミングが遅れると飛行性好子を獲得して、その好子がファルコナーがフラッシュするピジョンやルアーを凌駕する場合があり、レイクアウェイ・ロスト(上空で流されてロスト)の危険が出てくる。

●行動修正方法
 ハヤブサが上昇気流を探して上昇を始めたら、登り切る前に「逃飛鳩」をサーブして鳩を逃げ切らせ、上昇気流で上昇してファルコナーの頭上までリターンする時間はないことを学習させる。
 この学習をさせると、ファルコナーを中心として、いち早くマウンティングするハヤブサとなる。

【3月24日】
Q:ルアーパス訓練をやらなくても良いハヤブサは作れるのか。

A:
エイビアリーハックされたペアレントレアード・バードの場合、ルアーパス訓練をやらなくとも、良いハヤブサは作れるでしょう。しかし、その分、時間がかかってしまいます。

ルアーパス訓練の目的は、2つあります。
  @フットスキル獲得
  A筋力・体力の回復、獲得

上記の訓練をせずに、ピジョン・トレーニングを行う場合、鳥には少し高いハードルとなるでしょう。
その高いハードルの前に行う「低いハードル」として行われるのが、ルアーパストレーニングです。

ハンドレアードのハヤブサの場合、さらに時間がかかってしまうでしょう。

【3月23日】
Q:ルアートレーニングだけでハヤブサは上昇するようになるのか。


A:ハヤブサをルアートレーニングだけで上昇させることは困難である。ハヤブサは、ルアー獲得のために苦労して上昇する必要がないからである。しかし、上昇気流が発生する春先に上昇する場合がある。この時はハヤブサは上昇気流による飛行性好子を獲得するために上昇する。
  このようにハヤブサが上昇した場合、上空へ向かって羽ばたいている瞬間に、ホイッスルを吹き、ルアーを地面へ提示し獲得させるとよい。上昇行動を即時強化することになる。この場合、ルアーパスは即時強化にならないので行わない。

Q:旋回飛行中のハヤブサをフィストに呼ぶことの是非。

A:
ハヤブサの旋回飛行訓練は通常、1日1回〜2回である。その1回〜2回の訓練を大強化するためには、ルアーを獲得させるのが合理的である。ハヤブサは、攻撃性好子と餌好子(餌)の両方を獲得することになる。つまり、実猟に近い擬似ハンティングを行ってトレーニングを終了・強化することになる。ハヤブサをフィストにコールすると、餌好子しか得られないため、ルアー獲得に比べて、強化強度が小さく、擬似ハンティング訓練にならない。
 また、フィストコールを習慣化すると、フィストに過度に注目し、上昇し難かったり、ファルコナーがフィストを振り上げるとハヤブサが高度を下げてしまったりする場合がある。
 では、ジャンプアップス・トレーニングはどうかというと、フィストより下からフィストまでのコールなので、ハヤブサはファルコナーのフィストの使い方を弁別するので、あまり問題はない
 通常、フードを外したハヤブサにとって、フィストは、ステイ・パーチ(居場所)でもなく、フィーディング・パーチ(餌場)でもなく、一瞬だけのスタート台であるので、フィスト・コールはあまり望ましくないと考える。
●ハヤブサ訓練におけるルアー・コールは、「ハンティング行動」を強化するために使われる。

 オオタカやハリスホークはなぜフィストへコールづるかというと、、1回のハンティング行動で使う体力・筋力がハヤブサよりも小さく、ハヤブサと異なり、1日に何度もハンティング行動をさせることができることから、通常、少量の餌で、ファルコナーまでリターンさせることを目的に、フィスト・コールを行う。この場合、フィスト・コールは、ハンティング行動を強化するのではなく、ファルコナーのフィストへのリターン行動を強化することになる。また、ハンティングのスタイルから、オオタカやハリスホークにとって、フィストはステイ・パーチ(居場所):ウエイティング・パーチ(待機場所):カタパルト・パーチ(投鷹機)、フィーディング・パーチ(餌場)であるように訓練するので、ハヤブサと大きく異なる。また、毎回のリターン訓練をルアーで行うことも可能であるが、フィストコールによってフィストへの条件付けを強化する方が有意義である。
オオタカ、ハリス訓練におけるフィスト・コールは、「リターン行動」を強化するために使用される。

2006年

【10月31日】

Q:ハヤブサのストレートフライトから旋回フライトへの移行方法

A:ストレートフライトから旋回フライトへの移行の見極め。
  
・50mのクリアンスフライトに成功している。
   ・ルアー提示から、2秒程度で反応しフライトを開始する。
   ・エアーキャッチができる。

  上記のことができるようになったら、クリアンスをつけたまま、ワンターン・フライトをさせるために次のことを行う。
   ・50m離れ、クリアンスを付けてストレートフライトを行う。
   ・鳥が訓練者へ向かって30mフライトしたら、ルアーをホーキング・バッグに隠す。
   ・鳥がルアーを探しながら通過してターンを始めたら、ホイッスルして、ルアーを地面に置いてキャッチさせる。
   ・フライトごとにターンの回数、旋回の回数を増やしていく。


Q:ルアーへの反応が悪いハヤブサの修正方法

A:ルアーへの反応が悪い原因がいくつか考えられます。
  
@条件付けが不十分。
   A課題に対して体重が適切でない。
   B環境に嫌悪性刺激がある。
   C課題が過大である。
   D飛行する筋力がない。 

  対策として以下が考えられます。
  
 @条件付けの強化。
     ・容易なルアー課題の繰り返し
     ・十分な強化子(餌)の提供、ルアーに大きな餌を付ける。
   A体重減。
   B嫌悪性刺激の除去、又は訓練場所の変更。
   C容易な課題からの再スタート。
     ・近距離でのルアートレーニング
   D反応が得られる距離でフライトトレーニングを行い、筋肉分の体重を増やす。

  上記のことに注意して、即時反応が得られるようにします。


【8月 6日】

Q:換羽の最中にトレーニングを始めても良いか。

A:
どんなトレーニングを行うかの問題もありますが、基本的には以下の理由であまり望ましくありません

  @換羽の完了が遅延してしまう。狩猟を行う場合は、初猟に間に合わず十分な飛行能力を備えずして狩猟を行うことになる。
  Aジェスホールドを行うため、成長途中の羽を傷めやすい
  B羽が成長途中でテールケイスを装着できないため、尾羽を傷めやすい。
  C訓練中、飢餓設定を行うため、ハンガートレースを生じさせる可能性がある。
  D訓練中に急激なストレスが加わると、ハンガートレースが生じる可能性がある。


2005年


【 2月 4日】

Q:オオタカを獲物に当てて、獲物が獲れなかったとき、ルアーでは、留まった木からオオタカは
なかなか降りてきません。どうしてでしょうか。また、どうしたら良いでしょうか。


A:獲物の強い誘発刺激を受けて、オオタカに強い反射が起こった状態で、
ルアーでの弱い刺激では、その強い反射を越える反射が起こせないのです。

では、その後、どうするかですが、
@その強い反射が収まるのを待って、ルアーで降ろす。
A「振り鳩」などを行い、その刺激と同等の刺激を使って、反射を誘発する。


また、上記のどちらが望ましいか・・、ですが、一概には言えないのですが・・・、

野生の獲物をナマ追いした場合は、@が望ましい。
なぜなら、獲物を真剣に追わないことに対しての負の罰(抜く罰)となるからです。

野生の獲物を惜しくも逃した場合は、Aが望ましい。
獲れなくとも、望ましい行動が大強化されるので、次回も野生の獲物を真剣に追うようになるでしょう。

また、訓練が進み、また鷹が経験を積むと、
@で降ろせるパターンができあがるでしょう。

【12月31日】
Q:スモール・ファルコンにフードは必要か・・・?

A:フードを仕込むことができれば、鳥を「持ち運ぶ」際に便利です。
  しかし、インプリントの個体は、雛のうちから仕込まないとフード仕込みは困難です。
  小型ファルコンの場合、ハンティングのスタイルが鷹類と同じで、「獲物目がけてフィスト・スタート」
 なので、ハンティングを考えた場合は、フードは不必要です。
  日頃の飼育管理を考えても、周囲の環境を整備さえすれば、小型ファルコンは羽も傷み難く、絶対的
 な必要性はありません。
  ただ、小型ファルコンがフードをしていると格好いいですよね。^^)