ファルコノイド・ファルコンリー・アカデミー(Sugisaki )

[換羽について]
  *鳥にとって、「換羽」とは、「新しい羽を得る」と同時に、「飛行に不利な状態になる」ことである。
  そのため、それでもなお、「餌が十分に得られる状態・環境」があり、「自己保存が可能な状態・
  環境」がなければ、「換羽は始まリ難く」、「進行し難い」と言える。

  *雌鳥が産卵後、雄鳥は餌を獲って運ぶために換羽を遅らせる。その代わり、抱卵中の雌鳥が
  換羽を始める。雌鳥が獲物を獲るようになると、雄鳥も換羽を開始する。
  
  *「渡り鳥」の場合は、「渡り」の季節には換羽を一時中断する。

T.換羽開始の「引きがね」となるもの
   @日照時間の延長
   A気温上昇
   B栄養、食量の急激な増加
   C発情の停止

U.換羽開始・促進の方法
 1)ストレッサーを除去すること、ストレスを適切に処理すること
   @換羽時期前にマニングを行っておくと(十分に訓練しておくと)、鳥は嫌悪性ストレッサーを
  感受し難くなる。
   A遮蔽物によって嫌悪性ストレッサーを除去する。
   B小屋に入れて、鳥に自由を与える。
     ・小屋の中で、少しでも「飛行」できると、ストレスは処理されやすい。
     ・小屋の中で、自由に「水浴び」「飲水」ができると、ストレスは処理されやすい。

   *以下の理由で、ブロックやパーチに繋いだままの換羽は奨められない。
      @繋いだままでは、嫌悪性ストレッサーに晒され、ストレスを処理し難い。
      A羽ばたき、飛行、水浴びがし難いので、ストレスが処理されにくい。
      B成長途中の新しい羽を傷めやすい。
    

 2)栄養剤・ホルモン剤を使う
   @栄養補助剤
      ビタミン剤、必須アミノ酸
   Aホルモン剤
      治療的レベルでは、「女性ホルモン」、「チロキシン(変態のためにホルモン)」を
     投与、注射する。

 3)日照時間を調整する
    照明器具などを使って、日照時間を擬似延長させる。

 4)発情の強制終了
    発情している間は、換羽が始まらないので、絶食・減食を行い強制的に発情を止めてしまう。

V.換羽の様相
    次列風切羽 → 初列風切羽 → 尾羽
       *羽が3分の1まで伸びると、次の羽が抜ける。
       7日から10日で1枚の羽は伸びきる。

  [ハヤブサ類の場合]
    初列風切羽は、「外側から番目から、内側に向かって8・9・10の順に、
    そしてその後、外側から番目から外側に向かって、5・4・3・2・1の順に抜ける。
    尾羽は、中央から外側に向かって、順に抜ける。

  [タカ類の場合]
    初列風切羽は、外側から10番目から外側に向かって順に抜ける。
    尾羽は、中央から外側に向かって、順に抜ける。

W.換羽が始まらない、遅延する場合
  以下の理由が考えられる。
    1)ストレスを感じやすい状態、飼育環境である。
    2)日照変化を感じにくい飼育環境である。
    3)健康状態でない。病気の状態である。
    4)発情している。
    5)飢餓状態である。

X.換羽中に「急激なストレス」を与えてしまうと・・・・
   @ハンガー・トレイス、フレット・マーク、ストレス・マークという筋が羽に入ってしまう。
   Aピンチト・フェザーという変形した羽が生えてきてしまう。

Y.発情と換羽との関係
 生殖腺刺激ホルモン
が大量分泌されると、発情し、繁殖行動をとる。その後、生殖腺刺激ホルモン減少していくと、発情が止まり、今度は甲状腺ホルモンのチロキシンの分泌が増加し、換羽が始まる。

Z.「シーズン中に良く飛ばした鳥は、換羽が良く進む」と言われているが、なぜ?
   @シーズン中、十分に飛行させた鳥は、人間に十分に馴化しているので、ストレスを感じにくい。
   Aシーズン中、十分に飛行させた鳥は、フィット(健康)状態である。
      (健康状態は、飛行訓練で得られる。)

[.「放鷹」に記載されている日本のやり方で「換羽をさせるのに一端体重を落とす」のはなぜ・・・・?」
   @一端体重を落として、一気に餌を大量に与えると、生理的に栄養分の急激な増加を感じて、換羽を開始する。
   A発情している場合、絶食・減食で体重を落とすと発情が停止し、換羽が始まる。

\.用語集

   @片塒(かたとや)・・・・・生後2年目の換羽
      「雨覆、体羽」など、古い羽が少し残ってしまうことが多い。
   A(もろとや) ・・・・・生後3年目の換羽
      完全に換羽が行われることが多い。